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舞台版ハリー・ポッター:Harry Potter and the Cursed Child

もう3週間ほど前のことですが、

ウェストエンドで公開中(まだプレビュー期間かな?)の、

ハリー・ポッターの舞台版を観てきました!

 

ちなみにここでネタバレはしませんのでご安心を。

 

6月中旬のチケットを購入したのは、去年10月でした。

ちょうど発売の直前に、どこぞから案内のメールが来て

(たぶんロンドンのいろんな劇場のメルマガ登録をしていたので)

発売時間ぴったりにウェブサイトへ行きました。

 

たしかサイトに繋がるまで、1時間は待ったと思います。

 

舞台は第1部と第2部に分かれていて、別々の日に観に行くことも可能ですが

そんなに待てないので土曜日の昼に第1部、夜に第2部とチケットを取りました。

 

そして当日。

 

午前中は予定があったので、開始10分前に到着。

 

驚いたのは、開始10分前で客席がほとんど埋まっていたこと!

 

ロンドンの他の劇場だと、開演ギリギリまでロビーでお酒飲んだりして

開演時間を5分過ぎてから始めることが多いのに

開始10分前に行儀よく座っていたのがびっくりでした。

 

きっと普段演劇を観ない人も多かったのでしょう。

さすがハリー・ポッター、素晴らしい集客力です。

 

ストーリーはハリーたちの子供がホグワーツに入学してからの話。

その子役がめちゃくちゃ可愛い!

と思ったら、後日ロンドンの新聞・Evening Standardに彼の写真とインタビューが。

なんと、成人してました。

15歳くらいかと思っていたのに、今年23歳になるそうです・・・。

この人です。

Sam Clemmett

 

ハリー・ポッターシリーズと言えば、魔法。

舞台上でも、「一体どうやってやったの!?」という様々な仕掛けがされており、

そのたびに拍手が湧きました。

本当に魔法。

 

休憩に入ったとき、思わず隣に座っていた知らない女の子と

「すごかったね!」と盛り上がる盛り上がる・・・

彼女はパキスタンから来た留学生だそうで、

ロンドンにたまたま1週間だけ滞在するタイミングでチケットが取れたそう。

夜に第2部を観に戻って来た時も、彼女が隣に座っていました。

 

劇場を出るときに、「#KeepTheSecrets」と書かれたバッジが観客に配布され、

「内容は絶対口外しないように」と念を押されました。

なのでここでは書きませんが、当日に運が良ければリターンチケットが買えるかもしれないので

これからロンドンへ行く人は、ぜひ観に行くといいと思います。

 

ちなみに劇場内にお土産も売ってます。

私が買ったのはこちら。

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布バッグは、キングスクロス駅から徒歩すぐの図書館へ行くのに使ってます(笑)

 

もともと小さいころに観たハリー・ポッターの風景に感動して

「いつかイギリスに住む!」と決意した経緯があったので

このタイミングで観に行けたのが嬉しかったです。

セリフも面白かったので、スクリプトを買ってもう一度文字で楽しもうと思います。

 

でも本音を言うと、もう一度劇場で観たい!

 

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レイフ・ファインズ主演:Richard Ⅲ(リチャード3世)

なんでこんなに月日が経つのは早いのでしょう。

この一ヶ月は急遽ショーで踊ることが続き、

その傍らで頼まれた演劇台本の翻訳をし、

修士論文に取り掛かっておりました。

 

たまにはゆっくり舞台でも見たい!と思っていたら、

奇跡的にレイフ・ファインズ様のリチャード3世のチケットが、

公演日の前日に取れました。

最前列が2席空いていたのです。

当日、隣に座っていた女性と、

「前日にこんないい席が取れるなんて!」と盛り上がりました。

 

シェイクスピアでリチャード3世と言えば、醜く残忍なイメージ。

(本当はそうでもないという説もありますが)

ヴォルデモートを演じたレイフ・ファインズがどう演じるのかと思ったら

かなり原作に忠実でした。

3時間もずっと腰を曲げ、足を引きずっての演技。

ものすごい迫力でした。

他の俳優さんも、リチャード3世の迫力に負けず劣らず。

とはいえ笑いの要素も盛り込んでおり、3時間飽きることなく楽しめました。

 

今回見てきたのは、ハズレのないAlmeida Theatre。

昨年のギリシャ悲劇3部作の時もそうだったのですが、衣装が現代版でした。

何となくスタイリッシュな雰囲気のあの劇場にぴったりなんです。

基本的にスーツ、戦いのシーンだけ鎧兜みたいな。

セリフはシェイクスピア英語のままでした。

 

演出はRupert Gooldという、Almeidaの芸術監督をしている人です。

私が見たことのあるものだとBBCのThe Hollow CrownシリーズでRichard Ⅱ(ベン・ウィショー主演)や、昨年Almeida Theatreでやっていたギリシャ悲劇・Medeaの演出も担当しています。

どれも良かったので、来月行われる彼のトークイベントのチケットを即購入。

「Directing Shakespeare」ということで、テレビでは原作の世界観を忠実に出し、舞台では現代的な要素を盛り込んだ彼がどんな話をするのか楽しみです。

BBCのThe Hollow Crownなんて、日本にいたときからDVDボックスを取り寄せて見ていたほどですから(笑)

 

今年はシェイクスピア没後400年。

いろんなイベントが行われています。

 

大英図書館に売ってる、黒地に赤い色で

 

Lady Macbeth

 

と書かれた鉛筆を買うかどうか2ヶ月悩み中・・・

 

 

 

 

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人種とは?:Made Visible

ロンドンは温かくなったり寒くなったり。

私もすっかり風邪をひいてしまいました。

喉をやられたので、コーヒーを止めてひたすらはちみつレモンを飲んでいます。

 

そんな微妙な体調の中、Made Visibleというちょっと変わった劇を観に行きました。

 

この劇を紹介してくださったのは、以前London Bubble Theatreでお世話になった照明デザイナーの方。

ロンドンの劇場の第一線で活躍されている方なのですが、とても親切にしていただきました。

彼が照明を担当するということで、これは観に行くしかないと。

 

会場はロンドン五輪のスタジアムの近くにある、The Yard Theatre。

駅からすぐでしたが、道沿いの壁は落書きだらけであまり治安の良さそうな地域とは思えない…。

中に入ると山小屋のような隠れ家のような、温かい雰囲気のカフェバーがありました。

Time Out誌によると、ロンドンのベストシアター2位に選ばれたとか。(1位はNational Theatre)

 

開演直前、会場に入ると

俳優さんたちがステージでリラックスしながら台本を読んでいました。

セットは非常に簡素。

“Taken”と書かれたベンチ(誰か人が座っているということ)。

アクリル板にカラーペンで書かれた背景。

“Pond”と書かれた白くて丸いマット(公園の池を表している)。

 

上演時間になると、

「この劇は私が体験したように見えるけど、他の誰かが書いた作品を私が演じているだけ」

という前置きから始まりました。

物語に入り込みかけたところで、

「ちょっと台本のことで質問があるんだけど!」

と急に演技をやめて俳優同士で会話を始めたり、常に作品と一定の距離を置かざるを得ない状態でした。

 

一応ストーリーは、ある公園のベンチに座っていたインド出身の女性にカナダ出身の白人女性が話しかけ、

他愛もない話を展開するというもの。

そのシチュエーションについて、人種という観点で3人の女優さんが物語を出たり入ったりしながら議論します。

白人女性がインド人女性の横に座り、話しかけるというシチュエーションはあるのか?

このシーンを演じるのに、インドなまりの英語を話すべきか?

イギリス育ちのインド系女性が、白人を演じたらどうなるのか?

 

3人の女優さんのうち1人は若い白人のカナダ人(英語の発音もカナダ英語)、1人は40代くらいのインド系、もう1人はイギリス英語とインド英語を完璧に使いこなせる、恐らくイギリスで育ったと思われる若いインド系の女優さん。

劇中でも触れられていましたが、白人のイギリス人がこの舞台には出てきません。

なかなか面白いキャスティングでした。

 

ちなみにこの作品を書いたのは、Deborah Pearsonというカナダ・トロント出身の劇作家。

トロントは私も以前住んだことがありますが、街の半分は外国人と言われています。

いろんな人種が同居する環境にいたからこそ、書けた作品なのではないでしょうか。

 

彼女の他の作品も気になります。

 

 

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未来は明るい:After Hiroshimaディスカッション

私が約1ヶ月関わらせていただいた劇、After Hiroshima。

公演は残すところあと1日です。

昨夜はショーのあと、ゲストによるディスカッションがありました。

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ショー自体はタイトル通り、広島への原爆投下後の出来事がテーマになっています。

しかし内容は「戦争はとっても悲惨でこんな悲劇があって…」という重苦しいものではなく、

更なる犠牲者を出さぬようにと行動した、イギリス人たちの姿が描かれています。

そして劇中にも出てきたイギリスの反核団体CNDの活動家2名が昨夜、パネリストとして来られました。

 

まず、パネリストたちの人選が面白い。

その2名の活動家に加え、作品を書いた劇作家、ミュージシャン、ショーに出演した俳優、そして演劇研究者。

芸術・研究寄りの人がいたのが嬉しかったです。

というのも、私自身はデモ行進とか平和運動に直接関わるというのは考えたことはなく、

あくまでも演劇・パフォーマンスを通じて何ができるかを

「作品を作る」「情報発信する」という立場で考え続けたいと思っているからです。

 

さて、劇中にも出てくるイギリスの反核団体・CND。

(ウィキペディアのリンクを貼っておきます。CND Wikipedia

劇中では、1958年に初めてロンドンから核兵器工場のあるオルダーマストンへの行進を行ったときのシーンが出てきます。

 

初めて台本を読んだとき、日本から遠く離れたイギリスで

広島・長崎での出来事に心を痛めて行動した人たちがいたことに心を動かされました。

そして、今でも活動していることに驚きました。

昨日のディスカッションでも言及されていましたが、

本来であればCNDの活動は過去に終えられるべきだったのに

いまだに活動しなければならない=核兵器が存在するということです。

今は学校での平和教育にも力を入れているようですが。

 

ディスカッションの最後にオーディエンスからの質問タイムがありました。

核や戦争のことで会場の空気が少し重くなっていた中、

ジャーナリストの女性の発言が印象に残っています。

 

「メディア批判や将来を悲観するのではなく、

もっとメディアをポジティブに捉えて、未来は明るいと考えてみてはどうですか」

 

会場から拍手が湧きました。

どんな運動も現状や将来に不安があるからこそ活動を始めるのだと思いますが、

メディアやネットを味方につける・未来は明るいと信じることは

単に「〇〇反対!」と叫ぶより大切なことではないでしょうか。

 

今回の作品には、小学生の子からお年寄りまで参加しています。

日本人、イギリス人、他にも欧米・アジア各国から来た人たちがいます。

こんなに様々な年代・国籍の人が一堂に集まって戦時中・戦後の出来事に向き合うのは、

ロンドンでの演劇の醍醐味だと思います。

 

残す公演は今日の昼・夜のあと2回。

楽しんできます!

 

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シリア生まれの演劇:Goats

またまた大学院の先生の引率で、夜の遠足に行ってきました。

 

Royal Court Theatreにて夜9時開演。

 

開演前に劇場併設のバーで待ち合わせたのですが、先生いわくRoyal Courtのバーには有名人がよく来るとのこと!

昨日は残念ながらいませんでした。

 

今回観たGoatという作品は、シリアとレバノンの劇を集めた”Told from the Inside”というイベントの1つです。

台本を書いたのはLiwaa Yazjiさんというシリア出身の女性。劇作家・ドラマトゥルク・映画脚本家として、シリア内外で活躍されています。

作品はまだwork in progress(未完成な状態)ということで、俳優さんは全員台本を持ってリーディングに近い形で演じられました。

 

ストーリーの舞台は、内戦が続くシリアのとある町。戦いで死んでいった男たちの代わりにヤギが支給されることになった、という話です。

なぜ死んだのか、死ぬ前にどんな会話がされたのか、残された女性たちはどんな心境なのか。それぞれの会話・心情に焦点が当てられます。

 

紛争の描写も全て言葉だけ。メディアではショッキングな映像が流れ、視覚だけに偏ってしまいがちですが、こんなにシリア内部の話に「耳を傾けた」のは初めてでした。

でも「ヤギの支給」という一風変わった設定があるせいか、全体的なトーンは想像よりも明るかったです。

 

特に印象に残ったシーンを2つ紹介します。

1つ目は3人の青年たちの会話。

空爆と兵士から逃れ、建物に隠れているシーンです。

冗談を言いながらも携帯で家族へ最期のメッセージを録画しようとしたり、「死にたくない」と漏らしたり。

フィクションであってほしいですが、実際に起きているんだろうなと思うと胸が痛くなります。

 

2つ目は息子を亡くした女性の場面。

男性と2人で会話をしているのですが、彼女は言葉を話せない設定で、一言も喋りません。

顔はすごく何か言いたそう。なのに何も言わない。見ていてもどかしい!

でも紛争のさなか、声を上げたくても上げられない人がほとんどだと思います。

女性の声を何かで代弁しようとせず、あえて奪ってしまうというところが妙にリアルだと感じました。

 

そんな彼女がついに声を発するシーンが。

彼女の息子の一人が、「敵を殺してきた!」と興奮気味に帰宅したときのこと。

今まで一言も発しなかったのに、「出ていけ」と言います。

困惑気味の息子に対し、

「私は人を殺せなんて頼んでない」と。

 

声を失くした「弱者」だった彼女が、一番強く頼もしく見えました。

 

初めて見た、シリア人劇作家によるシリアを題材にした演劇。なかなか面白い作品でした。

いつかシリアの人たちが安心して祖国で演劇を楽しめる日が来ればと、願わずにはいられません。

 

 

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ただ生き続ける:Uncle Venya

現在関わっている2つのショーの本番が近づいてきました。

同じ日に両方のリハーサルがあったりして、ロンドンの街中を行ったり来たり。

おかげさまで忙しくしております。

 

とはいえゆっくり演劇も観たい!ということで。

 

約3時間ある、チェーホフの作品を観てきました。

 

劇場は私が渡英して最初に行った、Almeida Theatre(アルメイダ)。

ベン・ウィショーがBakkhaiというギリシャ悲劇で主演していたからです。

昨年はAlmeida Greekということで古代ギリシャの作品をずっと上演していましたが、年末からイプセン・チェーホフと近代に移りました。

そういえばロンドンに来てから、アルメイダの作品は全てチェックしています。ここの作品はタイトルだけ見ると難しそうな気がしますが、とてもわかりやすく面白く作られています。

 

Uncle Venyaの邦題は「ワーニャ伯父さん」。

アルメイダ版ではタイトルはそのまま、作中では主人公が”Uncle John”とイギリス風の名前に変わっていました。

 

私は日本語でも英語でも原作を読んだことがありませんが、これは舞台で観るから面白いんだと思います。

登場人物がたくさん出てくるので、本で読んで理解できる気がしません(笑)

 

あらすじは簡単に言うと、田舎に住む人たちが都会から来た教授夫妻に振り回される話。

銃が出てきても誰も死なないし、プチ失恋はあっても泥沼の恋はなし。そこの住人でなければさほど大事件ではない出来事の連続なのですが、キャラクターの内面の描写が細やかです。

 

主人公ジョンが自分の人生に絶望したとき、教授の娘・ソーニャが”We just keep living.” と諭します。一時は自殺しようとしたジョンですが、ラストシーンでは日々の仕事に戻ります。

 

この「ただ生き続ける」ということ。当たり前すぎてそこに価値を見出すのはなかなか難しい。

 

留学中の「何かしないといけない」というプレッシャーは、多くの人が持っているのではないでしょうか。

私も学生ビザが1年4ヶ月しかなく、ビザの2年延長を目論んでひそかに応募していたイギリスYMSビザ(ワーホリみたいなもの)の抽選にもあっさり外れ、今のうちに意味のあることをしないといけないんじゃないかと焦りまくりました。

日々淡々と生きる、特に何もせずに過ごすというのが苦手です。飽き性なのもあるかもしれませんが、1つのことだけに集中するのも苦手。仕事・学業・習い事と3種類くらいあって初めて、エネルギーが上手く循環しているような気がします。

 

ジョンが今までもそしてこれからも田舎で農場経営の仕事をし続けるという選択をした時。私だったらその生き方は選ばないけれど、こういう生き方も素敵だなと思いました。劇中で何かを成し遂げたわけでもなく、これからも多分そのまんま。でも生き続けること自体に価値がある、むしろ価値の有る無しは別にして、とにかく生き続けること・・・

 

「何かをしないといけない」プレッシャーを感じている人、お疲れ気味の人に見てもらいたい作品です。

 

 

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レイフ・ファインズにつられて:The Master Builder

ロンドンに来たら生で観たかった俳優の1人、レイフ・ファインズ様の舞台をついに観てきました。
「ハリー・ポッター」のヴォルデモート、「007」のマロリー(M)など、映画やテレビでも多数活躍されていますが、この人は絶対舞台で観るべき!!

 

声も身のこなしも品と深みがあって、 本当に素敵でした。

 

Old VicはThe Master Builder仕様になり、周辺の壁には彼のポスターがズラリ。
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終演後、ポスターの横にならんで写真を撮る人がたくさんいました。

私もやりました。ツーショットを自撮り(笑)

 

さて、演目のThe Master Builderは「近代演劇の父」と言われるイプセンの作品。

日本語では「棟梁ソルネス」と訳されています。

 

以下、簡単なあらすじです。

街で一番の棟梁・ソルネス(レイフ・ファインズ)は若手の台頭を恐れていた。そこに10年前に出会ったという若い女性・ヒルデが現れ、「空中に城を作る」という約束を果たしてほしいと言う。彼は以前双子の子供を亡くして以来希望を失っていたが、約束を果たすべく塔に登る。ヒルデやソルネスの妻らが見守るなか頂上までたどり着くも、転落死してしまう。

 

正直、好きな類の話ではありません。

 

ヒルデ、何しに来たん!?なんでわざわざ塔に登ったん!?

 

ツッコミどころ満載です。

 

でも理屈では説明しようのない、どうしようもないことをやってしまうのが人間です。

私もなぜか、終演後にスクリプトを購入しました。好きな話でもないのに。

 

ヒルデが最後に”My master builder!”と誇らしげに叫ぶ声がまだ耳に残っています。(ヒルデ役の女優さんが何となく土屋アンナに似ていたような)

自分のせいで死んでしまった…と悔いることもなく、「私の」と付けて叫ぶあたりが狂気じみていますよね。大きなブランコをこぎながら、ソルネスが塔のてっぺんにたどり着けたことを祝福していました。

 

死ぬ間際に何かを成し遂げられて良かった、とは私は思いません。双子も夫も亡くした奥さんはどうするの?(いや、この奥さんもたいがい変わってるので、図太く生きていくのでしょうが…笑)

彼の場合はまさしく「地に足のつかない」場所に城を作ると言って塔に登っていきました。踏み込んではいけない領域に踏み込んだような。Master Builderと言われる人が、なぜさらなる高みを目指すのか。

 

ソルネスをヒーローではなく「ちょっと理解できないところがあるおじさん」として演じていたのが良かったです。あえて感情移入をさせずに観客と距離を取った、そんな印象でした。

でももっと知りたいので、翻案を手掛けたDavid Hareのトークイベントに今度行ってきます。

この人は日本でNTライブとして公開された「スカイライト」も手掛けた人。スカイライトは渡英前に観てとても気に入った作品だったので、楽しみです。

 

それともう一つ。

レイフ・ファインズ様が、2018年にNational Theatreで主演するというニュースが入ってきました。

 

観に行きたい!!

 

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7年越しの願いが叶う:”Ma Rainey’s Black Bottom”レビュー

「あーーこの作品が観たい。あの俳優さんが観たい!」

 

と念じていると意外と叶ってしまうようで(笑)

 

先日、7年間ずっと観たかった作品、アフリカ系アメリカ人劇作家オーガスト・ウィルソンによる”Ma Rainey’s Black Bottom”をNational Theatreで観てきました。

 

私がこの作品と初めて出会ったのは大学3年生のころ。アメリカ演劇ゼミに所属していた時、毎週生徒が交代で作品についての議論をまとめて発表するのですが、たまたま私が担当したのがこの作品でした。

その後卒論でも、このMa Raineyを違う角度から論じました。

そして昨年、大学院受験のためのサンプルエッセイも、この作品について書きました。

本当にちょうど1年前、卒論の内容を4000語にまとめることができず、一から分析しなおして書き上げたのを覚えています。

 

合計3回論文にしたわけですが、恥ずかしいことにYou Tubeで作品の一部を観ただけで、一度も上演作品を観たことがありませんでした。

それがなんと!家から徒歩圏内の劇場で上演されることに。

オーガスト・ウィルソンは他にも名作をたくさん残しているのに、その中からMa Raineyを選んでくれたNational Theatre(以下NT)に感謝です。

ちなみに劇場の中にある本屋さんはオーガスト・ウィルソン祭り☆

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物語の設定は1920年代のシカゴ、某レコーディングスタジオ。
ブルースの母と言われるMa Rainey(実在した人物です)のレコーディングが予定されていましたが、本人がなかなか現れません。
2階にあるコントロール・ブースには白人プロデューサーとマネージャー。1階はレコーディングスタジオ、地下がバンドの控室兼リハーサル室。Ma Raineyのバンドメンバーである4人の黒人ミュージシャン(Cutler, Toledo, Slow Drag, Levee)の地下室でのやりとりを中心に物語が進みます。
一番若手のLeveeは「ブルースなんて古い!今はアップテンポなスウィングの時代だ!」とMa Raineyの曲を勝手にアレンジしたり、白人プロデューサーに取り入って自分の楽曲・バンドでデビューすることを目論んでいます。
約束の時間に大幅に遅れ、甥のSylvesterとガールフレンドのDussie Maeを連れてやってきたMa Rainey。コーラがないから歌わない、契約書にサインしたくない、と散々ゴネますが、何とかレコーディングは終了。しかし反抗的なLeveeはMa Raineyに解雇されます。
これで自分のバンドが組めると意気揚々のLeveeですが、「これではデビューは無理だ」とプロデューサーに態度を覆されます。さらに買ったばかりのLeveeの靴を、Toledoがうっかり踏んでしまいます。激高したLeveeがToledoを刺殺したところで、物語は終わります。

 

台本だけ読んだときは、Leveeを身勝手なやつだと思っていましたが、NT版では野心溢れた魅力的な(ルックス的にも!)若者でした。

もっとバンドメンバーに対して斜に構えたようなイメージでした。特に第一幕ではバンド仲間と楽しそうに会話していて、解雇後の孤立したLeveeとの違いがくっきりと出ていました。

子供のころ白人のギャングに家族を殺され、自らも重症を負った過去を持つLevee。白人を利用してのし上がろうとしましたが、結局白人への復讐どころか仲間の黒人を殺してしまう結末は、いつ読んでも(舞台を観ても)スッキリするものではありません。

現実でも人種問題・移民問題がスッキリした結末を迎えるなんてことは、残念ながら難しそうです。

白人プロデューサー・マネージャーもいわゆる「悪役」という感じではありませんでした。一儲けしたいという下心を持ちながら、面倒なことに振り回されている「どこにでもいる面白いおっちゃん」でした。悪気があるわけでなく、「たまたま白人に生まれて、たまたまこの仕事をしている」という印象。

善悪がはっきり分かれない・スッキリしないのが、この劇のいいところなんじゃないかと思います。「あぁスッキリした」で終わる作品より、「7年間何度も読み、分析してもまだ考えさせられる」作品の方が私は好きです。

 

セリフはもとの台本とほぼ同じだったと思います。全員イギリスの舞台・テレビで活躍している俳優さんでしたが、方言指導の先生がついていたようで、差別用語も含め原作のままでした。

会話のテンポが速くてコミカル。所々しんみりしてしまう場面もありますが、笑いが起こるシーンもたくさんありました。

しかし何度も台本を分析してきた身としては、人種がテーマの作品で、この場面で、果たして笑って良いものか?と戸惑ったシーンがあったのも事実です。

近くに座っていた黒人の男の子は大爆笑していましたが…

 

ちなみにディレクターはDominic Cookeというイギリス人で、シェイクスピアなど数多くの作品を手掛けています。批評家がどう見るかはわかりませんが、非常に原作に忠実な印象を私は受けました。今後はベネディクト・カンバーバッチがリチャード3世を演じるTVシリーズ・The Hollow Crown: The War of Rosesの監督をされるようです。

 

それにしてもなぜNTはこのタイミングでMa Raineyを上演することにしたのでしょうか。

その答えが聞けそうなイベントが。なんと、ディレクターのDominic Cookeによる講演があるそうです。お値段4ポンド、行ってきます!

 

NTでは2月末に、リーズ大学の先生を呼んでアフリカ系アメリカ人劇作家についての6時間のレクチャーもするそうです。
こちらは70ポンド。ちょっと厳しいなぁ…