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「帰りたくなる」パフォーマンス:Fox Symphony

タイトルは決して悪い意味ではありません。

思わず日本に帰りたくなるパフォーマンスを観ました。

一緒に観に行ったギリシャ人・フランス人のクラスメートも、見終わったあと

 

「ホームシックになった!帰りたい!」

 

って。

 

みんなLCCとか電車ですぐ帰れるからいいやん。

 

日本まで何時間かかると思ってるんだ(笑)

 

今日のパフォーマンスはFoxという名のとおり、キツネをモチーフにしたもの。

キツネのメイクを施した女性アーティストのソロパフォーマンスだったのですが、映像や口パクを駆使して1人何役もこなしていました。

たとえばバンドのボーカル役の時は、ドラムやベースは事前に撮った自分の映像を後ろに流すとか。

 

テーマはイギリス人のアイデンティティー。

「典型的なイギリス人たち」を言葉や動作、音楽、食を通じて表現するのですが、出身地・階級によってアイデンティティーが細かく分かれれています。

スコティッシュ、アイリッシュ、中流階級、労働者階級…

英語の発音、大事にしている記念日、結婚相手、食べ物。生まれ育った土地や階級はこんなに影響力を持つのかと思い知らされました。

そういえばスコットランド出身のクラスメートはロンドンに住んで4年目ですが、自己紹介の際には必ず”I’m Scottish”と言います。Britishはまだ許せても、Englishと言われると「ちがーう!」って思うそうです。

 

さて、パフォーマンスに戻ります。

 

口パクとコミカルな動きで、会場は終始笑いに包まれていました。1か所だけ彼女自身の声を撮ったと思われる映像が流れ、そこだけちょっとしんみり。

ロンドンはmulti cultural cityと言われますが、いろんな人たちがいろんな理由で集まっています。

長く住んでいても祖国が忘れられず、「ここは自分の居場所じゃない」と思っている人。あるいは祖国が嫌で思い出したくもない人。

 

映像の中で印象に残った部分がありました。

 

「子供の頃から自分のアイデンティティーに悩んでた。おじいちゃん・おばあちゃんがすぐ近くに住んでるとか、親子3世代で同居しているクラスメートが羨ましかった。きっと自分がどこに属しているのかなんて、考えたこともないだろうから」

 

このあと、都会でひとりぼっちのキツネの映像が流れます。

山から下りてきてしまったキツネ。

ゴミを漁って食べるキツネ。

あてもなく彷徨う、1匹のキツネ。

 

家族はどこにいるの?

1人でそんなもの食べて生きてるの?

ここはいるべき所ではない。

 

このキツネの映像で、多分みんな帰りたくなったと思います。

言葉を発しなくても、感情を出さなくても、動物の映像のインパクトは強烈ですね。はっきりしないからこそ余計に自分と重ねてみたり、深読みしたり、いろいろ考えてしまうのでしょうか。

 

今まで「アイデンティティー模索系」パフォーマンスはいくつか見ましたが、今日のパフォーマンスほど「観客自身のアイデンティティー」を考えさせるものはありませんでした。逆にキツネのメイクをしたアーティストが何者なのかは、わからずじまい。

面白い体験でした。

 

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斬新なエンディング:Free Admission

作品を「どう終えるか」は、制作者にとって悩ましい部分だと思います。

 

時にはお客さんにとっても。

拍手をするべきか、それともまだパフォーマンスが続くのか?

観客全体が判断に悩み、しばらく微妙な空気が流れるような場面に居合わせたことがあります。

 

それはさておき。

今日も夜の遠足的な感じで、大学院の先生と学生の計5人でSOHO Theatreに行ってきました。

先日、土と牛乳の被害に遭ったパフォーマンスに連れて行ってくれた、とても可愛らしい先生です。(授業も素晴らしいです)

 

今回パフォーマンスをしたのはUrsula Martinez(ユーソラ・マルティネス?)という女性アーティストで、オリヴィエ賞を獲ったこともあるとか。

先生が「前に観に行って、面白かったの!」と言っていたのですが、この先生が面白いというからには何かあるんだろうなぁという気がしていました。

案の定、会場前にAge recommendation: 16+ (contains nudity)と注意書きが。

「もう慣れたよね」と言いながら会場入り。ロンドンで全く脱がないパフォーマンスアーティストがいたら教えてほしいものです。

 

舞台上にはステージをかたどったセットが置かれていました。

大きな壁の真ん中に上半身が出るような横長の空間があり、そこに劇場にあるような赤いカーテンが取り付けてあります。

 

「パフォーマンスの始めと終わりは悩むよね」と言いながら、前説のように話し出すユーソラ。

最前列に座っていた女性に、「あとで一緒にセルフィー(自撮り)撮ってくれる?」とスマートフォンを手渡しました。

その後セットの後ろにまわり、いろんな小話をしながら土とブロックで長方形の空間を埋め始めます。

話の内容は高校生の頃の流行語から家族の話、フェミニズム、親戚の戦争体験など。

動作としてはただブロックで空間を埋めるだけでしたが、日本人でいうと友近のような話しぶりで面白かったです。

 

その後完全に空間が埋められ、姿が見えなくなりました。

するとブロック塀がスクリーンになり、セットの裏に隠れたユーソラの姿がカメラを通じて映されました。

おもむろに脱ぎだすユーソラ。

 

“I’m ready!”と言いながら、ロッキーのテーマと共に全裸でステージに登場!

最前列の女の子と約束通りセルフィーを撮っていました。

その様子を女性スタッフが引き続きビデオカメラで撮影。

 

そしてセット裏に衣装を置いたまま、ステージを去りました。

 

しかしここで終わらない。

 

彼女のあとを女性カメラマンが追いかけ、カメラで捉えた映像がブロック塀に映されます。

2階にある会場を出て階段を下り、そのまま外につながるドアへ。

 

ドアは開けっぱなし。

 

劇場と外側の境目に、全裸で立ちました。

 

盛り上がる観客。

 

驚く通行人。

 

びっくりしてドアの内側をのぞきこんだおじさんが一瞬映り、笑いが起きたところで終了しました。

 

あの終わり方は、今まで見たことなかったなぁー…

 

以前パフォーマンス制作の授業中に、「パフォーマンスをどう終えるべきか?」というテーマで話し合ったことがありましたが、

 

「全裸で劇場を飛び出す」という意見は出てきませんでした。

 

もっとクリエイティブになりたい。

 

 

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土と牛乳にまみれて:FEAST

教育上あまりよろしくないパフォーマンスを観てきました。

 

FEAST=饗宴、宴会。

 

名前から連想されるように、「食べ物」をテーマにした作品です。

 

とてもグロテスクな。

 

うちの大学院では学期ごとに「おすすめのパフォーマンスリスト」が手渡されます。そのリストを作っている先生がわりと前衛的な作品を好むのか、観に行ってビックリすることも多々ありました。今回は先生と私とクラスメートの3人で観てきました。

 

会場はBattersea Arts Centre。実験的な作品を多く扱い、若手アーティストが多数活躍しています。

21時開演、自由席。開演ギリギリで入ったので、席はほとんど埋まっています。

唯一空いていたのが最前列。なんでだろうと思いつつ最前列に行くと…

 

客席と繋がったパフォーマンススペースには土が敷き詰めてあり、目の前には非常に薄着の(ほぼ裸の)女性2名と男性1名。それぞれフォーク・スプーン・ナイフを持ち、足首にロープでたらいのようなものが括り付けられ、ポーズをとっていました。

 

それでみんな最前列を避けたのか…

 

照明が切り替わると、3人は土の上を這い始めました。

体中、土だらけ。しかも動くとこっちに飛んでくる。

 

“Breakfast”

 

前方のスクリーンに文字が映されました。

すると、上から滝のように牛乳が!!

3人は口を開けて上から降ってきた牛乳を飲みます。

 

ここで私と隣にいた友人のカバンに悲劇が…

 

脚の間に挟んで置いていたら、土と牛乳まみれになりました。

帰ってからウェットティッシュで拭いたらなんとかなりましたが、友人は布のバッグだったので心配です。

舞台後方ではシリアルが降りました。

欧米の朝ごはんです。

 

 

“Lunch”

 

豪華な食材が乗ったテーブルが現れました。

生肉とか。生野菜とか。

お弁当によく入ってるタイプのミートスパゲッティとか。(あのめっちゃオレンジなやつ!)

 

スパゲッティをわしづかみにして戦い始める2人。

案の定、こちらに飛んできます。

オレンジ色の服を着ていったのが不幸中の幸い…

 

その後赤ワインを飲み始める3人。

今にもグラスからこぼしそう+口から噴きそうだったので、

 

「頼むから赤ワインだけはやめて!!!」

 

と心の中で叫びました。

やはり口から噴き出したのですが、幸いこちらには飛んでこず。友人もかなりドキドキしたそうです。

 

ほかにも生肉を身体にたたきつけたり、ほうれん草をこすりつけたりしていたので、パフォーマーの身体はドロッドロです。

 

“Dinner”

 

3人がテーブルに立ち、まさかの排泄シーンから始まりました。

うまいこと動きと音で表現していましたが、本当に吐くんじゃないかと内心ヒヤヒヤ。

ここからは小型カメラを使い、食材や口の中をスクリーンに大写しにしていました。

ラップで顔をぐるぐる巻きにして動かなくなるなど、死を連想させる演出でした。

 

ここまで食への渇望・無駄を直接的に描いた作品は初めて見ました。

終演後、駅で食べ物の匂いが漂って来たときはただただ気持ち悪いとしか思えませんでした。

帰りにスーパーで買い物をする予定でしたが、できませんでした。

 

しかし悲しいことに、人間はすぐに忘れてしまう生き物。

翌日は普通に肉を食べました。

 

 

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ロンドンの劇場の窓に住んだ話

ある日、大学院の先生からこんなメールが来ました。

 

「1日だけCamden People’s Theatreの窓の住人にならないか」

 

Camden People’s Theatreといえば、Euston(ハリーポッターで有名なKing’s Cross駅から北に一駅)という、なかなか人通りの多いところにある劇場です。

この劇場が”Whose London is it anyway?”という、ロンドンの住宅問題をテーマにした演劇やパフォーマンスのイベントを半月にわたり実施しています。

 

ここ数年ロンドンの地価が格段に上がり、なんと給料の7~8割を家賃に持っていかれているという統計もあるくらい。

私はロンドン中心部にある大学の寮(3人でバスルーム・キッチンシェア)に住んでいますが、毎月16万円近く払っています。6年ほど前にカナダ・トロントにいた時は、たしか同じ条件で毎月4万円くらいだったような…。

家賃高騰の理由は、人が集まりすぎているから。ほとんどが外国人だそうです。

大学寮は留学生の方が多い気がします。地方出身のイギリス人学生がなかなかロンドンに住めないと、ニュースでやっているのを何度も目にしました。

まさに、「ロンドンって誰の街?」というわけです。

 

さて、大通りに面した劇場の窓で9時間過ごしました。
ヒーターもwifiも完備という、なかなか恵まれた環境。
ここ5日間お湯も暖房も止まっている家に住んでいる私としては、暖かさが嬉しかったです。

 

最初はなんとなく恥ずかしくて、読書やパソコン、来てくれた友人と話して過ごしました。
なるべく通行人と目を合わさないように・・・
でも段々調子に乗ってきて、こちらから通行人に何かしたい!と思うように。
真正面から道路に向き合い、写真OKの旨とTwitter・インスタグラム用のハッシュタグを書いた紙を見せながら、通行人全員とアイコンタクトを試みました。

 

気づいてくれた人はほとんど笑顔を返してくれたのが嬉しかったです。
雨の中写メを撮ってくれた人もいましたし。
びっくりする人、逆にこっちを驚かしにかかる人、手を振ってくる人、投げキスしてくる人、一旦どこかに行ってまた戻ってくる人・・・

 

反応が良かったのは、ひとえに「窓ガラス」のおかげ。
もし私が窓の外に座っていたら、ほとんどの人が目を合わせてくれなかったと思います。
たとえ行動が丸見えであっても、声が聞こえる状態であっても、窓ガラス1枚あるだけでホームレスから窓の住人(=パフォーマー)になり、見る側・見られる側も安心できるんですね。
窓ガラスのおかげでパフォーマーからお金をせびられることもないし(笑)

 

渡英して約4ヶ月、はじめてロンドンを文字通り「じっくり」見ました。

「見る」「見られる」ということに敏感になったのか、帰り道に最寄駅で初めて、おびただしい数の監視カメラが設置されていることに気づきました。

私たちの行動はこんなに見られていたのかと。

 

本当に誰のロンドンなんでしょうね。