IMG_3710

VERVEロンドン公演

ロンドンに来てから、コンテンポラリーダンスを観る機会が増えました。

というか日本にいる頃はバレエかストリートダンスばかりでしたが、

ロンドンにいると本当に沢山の公演・レッスン・ダンサーに出会います。

その中でも「これは!」と思ったのが、先日観に行ったVERVEロンドン公演。

リーズにあるNorthern School of Contemporary Danceという学校の、Postgraduate(修士)レベルの卒業生たちのパフォーマンスです。

 

Kai Tomiokaさんという、私の知人の知り合いの息子さんが出ているということで観に行ったのですが、

12人のダンサーの中でもひときわ重要な役を踊っておられました。

踊り方に品があって私好みだ!と思ったら、もともとバレエ学校でトレーニングされていたようです。

Kaiさんはじめどのダンサーも抜群の身体能力と表現力で、終始圧倒されました。

 

内容は約20分の作品が4つ、それぞれ異なる振付家による、実験的な作品でした。

普段アカデミックな視点でコンテンポラリーダンスを勉強している身としては、実験的な作品を観るとワクワクします。

セリフもある演劇的なもの、身体のみで表現する「これぞダンス!」というもの、いろいろありましたが

特に個人的に気に入った2作品を紹介します。

 

Athina Vahla振付 “A Soft Target”

実験的な作品群の中でも、一番ストーリー面・楽曲面でもオーディエンス・フレンドリーな作品(笑)

途中でものすごくハードなブートキャンプのシーンがあって、ダンサーは大変だったと思いますが・・・。

エドワード・バーネイズ著、”The Engineering of Consent”というエッセイからインスパイアされたそうです。

バーネイズは「広報の父」と言われる存在で、PR・プロパガンダが大衆に与える影響を論じた人。

作品中でもさまざまなシーンで、一人のダンサーによって他のダンサーが盲目的に支配される様子が描かれていました。

何がオーディエンス・フレンドリーって、バーネイズのことを知らなくてもダンスだけで何となく言わんとしていることが伝わってきたからです。

「なんじゃこれー!」と言いたくなる、観客を置いてきぼりにしたようなパフォーマンスより、

何かしら自分の心に引っかかるような、共通点や思い当たるふしがある作品がいいなと改めて感じました。

 

Anton Lachky振付 “Almost Poetic”

ショーのフィナーレを飾るに相応しい、明るくパワーをもらえる作品でした。

それぞれのダンサーのソロがあったのですが、衣装も一人ひとり違って

若いダンサーたちの個性が映えていました。

バレエだと集団で踊る時、個性を出すことは滅多にないので

1人ひとりの違いを出すのはコンテンポラリーダンスならではだなぁと感じました。

観ていて元気になれる作品。

 

世の中いろんなダンスの作品がありますが、

私は観終わったあとで「踊りたい!!!」となる作品が一番だと思っています。

VERVEを観たあと早速、会場にあったダンス・レッスンの案内をいただいて帰りました。

コンテンポラリーダンス、やってみたい。笑

 

IMG_3204

幻想の世界:ジゼル

日本で一緒にバレエを習っていた友人がロンドンに遊びに来てくれたので、

一緒にロイヤルバレエのジゼルを観に行きました。

 

たしかくるみ割り人形が終わった1月ごろ、

地下鉄の駅に白いヴェールをかぶったジゼルのポスターが貼られていたのですが

とても美しい亡霊の写真に惹かれました。

 

その写真と同じ姿のジゼルはとても美しく、幻想的でした。

 

印象に残った場面をご紹介します。

まず第1幕。

ジゼルのジャンプの軽さにびっくり。

でも亡霊のようにフワフワしているのとは違い、

生き生きと弾むように跳んでいました。

 

おなじみのジゼルのバリエーションは、バチルダ姫やジゼルの母親に向けての踊りで

恋人・アルブレヒトは舞台上にいない演出でした。

バチルダ姫の前での丁寧なお辞儀と、

村人の前でのちょっと照れたようなお辞儀。

こんなに相手との関係性をきちんと表している踊りは初めて見ました。

 

そして恋人の裏切りを知ってしまったシーン。

一度下を向いて、もう一度顔を上げた時には

完全に別人の顔になっていました。

顔つきが「あ、この人危ない」という表情。

激しく感情をぶつけるのではなく、幻覚を見ているようなフワフワした状態が続きます。

 

第2幕。

圧巻は森にさまよい込んだヒラリオンをウィリたちが円になって囲むシーン。

恐ろしいです。

 

そして、ジゼルは自分を欺いていたアルブレヒトを許し、命を助けるのですが

現代人の感覚で言うと、

「そんな都合のいい話あるかい!」

となりますよね。

 

今回の作品で好きだったのは、アルブレヒトが来たときに

ジゼルが最初は淡々と接していたところ。

「大好きな彼を殺さないで!」

と情熱的になるのではなく、

そっと許すジゼルが聖母のよう。

裏切った男を殺すことにこだわるミルタの方が、不憫に思えました。

そんなに奴らにこだわらなくていいんじゃないかと。

 

本編は以上です。

最後に2つ小話を。

 

休憩時間中、大好きなバレリーナに遭遇しました。

長いことロイヤルバレエでプリンシパルを務めていた、日本人女性ダンサーです。(バレエ通ならピンときますね。笑)

とても美しく、突然話しかけたにも関わらず、丁寧に対応してくださいました。

 

もう1つ。

秋にEnglish National Balletもジゼルを上演します。

振付がAkram Khanという、コンテンポラリーダンスやインド舞踊のバックグラウンドを持つ振付家なので、大幅な改訂になるのではと思います。

こちらも楽しみです!

 

IMG_3272

ダンスでシェイクスピア:Golden Hours(As You Like It)

大学院で同じコースの友人から、

 

「Dance Dramaturgyに興味があるなら絶対知っておくべき!」

 

と言われた振付家・Anne Teresa De Keersmaeker(アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケル)の作品を観に行きました。

 

友人は以前ベルギーでの公演を観たそうですが、本作はUK初上陸だそうです。

 

IMG_3273

 

公演前に振付家De Keersmaekerと彼女のドラマトゥルクBojana Cvejic、パフォーマンス研究者のAdrian Heathfieldによるトークイベントがありました。

 

大学院でAdrian Heathfieldの文章は何度か読んでいたのと、授業で行われるプレゼンで私が担当する回のリーディングリストにBojana Cvejicのエッセイが含まれていたので、研究目的で参加しました。

 

振付家・ドラマトゥルク・研究者の3人が並ぶと、それぞれの役割がよくわかります。

研究者が振付家に質問をし、振付家による少し抽象的な表現や解釈が難しい部分を、ドラマトゥルクがわかりやすい言葉で補う。

作品を作る時は2人で質問を投げかけながら、形にしていくそうです。

 

また、教育もドラマトゥルクが行う大切な仕事の1つ。

ダンサーにはただ身体の動きを真似するのではなく、一つ一つの動きが持つ意味を理解してほしい。

そこから2人のコラボレーションが始まったそうです。

 

約1時間のトークイベントの後、隣のSadlers Wells劇場に移動。

演目はシェイクスピアの「お気に召すまま」を題材にした作品です。

 

友人から

 

「衝撃的だから覚悟して行ってね」

 

と言われていましたが、

 

たしかに斬新。

 

以下、ネタバレです。

 

 

まずセットがない。

音楽もほとんどない。

衣装はパーカーやシャツなどの普段着。

スクリーンに字幕として出てくる、原作からの抜粋は断片的。

 

その代わり、身体の動きでストーリーを伝えていました。

 

ダンサーは言葉を発することはありませんが、セリフを覚えていたのではないでしょうか。

ほとんどが完全に無音の中で進むので、そうでないと振付を覚えたり動きのタイミングを掴むのは難しいと思います。

 

音楽がないダンスを、大きな劇場の舞台で行うとどうなるか。

私は身体の動きを、いつも以上に集中して観ました。なんとか意味を掴もうとして。

一方で音楽による「一体感」がないので、人によっては退屈だったと思います。

 

例えばクラシックバレエだと、音楽は非常に重要な要素。

チャイコフスキーは何度聞いても飽きませんし、聞くだけでストーリー・情景が浮かんできます。

De Keersmaekerはトークイベントで、音楽をどう捉えるか?という質問に「時間を示すもの」と答えていました。

たしかに音楽によって踊りの長さが決められます。

その点「無音」だと、時間による制約から自由になれるのかもしれないと、作品を観ながらふと思いました。

 

作品自体も面白いですが、創作過程が知りたくなる作品でした。

彼女の本、買おうかな…