rise company

ロンドンの劇場とプロデューサー

ロンドンに来て、二つのコミュニティーカンパニーに参加しています。

今はそのうちの一つのリハーサルがほぼ毎日あるのですが、

昨日は日本の劇場関係者の方が、文化庁の研修を通じて視察に来られていました。

先日、プロデューサーが

「今度日本に行くのよー!」と言っていたので

日本の劇場とも交流があるのかと嬉しく思っていた矢先でした。

 

休憩の合間にいろいろお話を聞かせていただきました。

 

渡英前に受けていた、一般向けの演劇レッスンが楽しくて

誰もがダンスを習うみたいに演技を学べる世の中になればいいなと思っていたのですが

年齢問わず演劇に親しむ機会を公共劇場の場から発信しよう、

という動きが盛んになっているそうで

そういう道もあったか!と気づく。

 

私が今いるThe Old Vicは、昔からファンの多い劇場。

ベン・ウィショーがハムレットを主演して一夜にしてスターになったり、

今年はレイフ・ファインズも主演していました。

そういう映像でも活躍する有名俳優の公演も手掛ける一方で

コミュニティーカンパニーの運営もしていたり、

俳優志望の若い人たちへの演技レッスン、

劇作家・演出志望の人たちへのワークショップ、

EU離脱や環境問題について演劇を通じて考えるイベントも手掛けています。

他にも地元の学校に出向いたり、招待したりしているそうです。

あとは劇場併設のカフェバーも素敵。

 

とにかくいろんな方法で、集客・創客する努力をしています。

 

そのためにプロデューサーが何をしているのか、昨日のミーティングで聞く機会がありました。

細かい契約条件の確認、意思決定、寄付をしてくれる団体との様々な調整・交渉・・・

プログラム一つ作るのにも、寄付をしてくれた団体のロゴのサイズや掲載順序など

ものすごく気を遣うようです。

そして今回は一時的に公園に劇場を建てるので

芝生にかける保険や芝生を保護する建築方法、屋根や壁の色や素材など

条例や予算を考慮に入れながら調整する日々。

リハーサル室の外ではそんなことが行われていたのかと、勉強になりました。

 

私は最近、カンパニー・マネージャーのアシスタントをしています。

彼女はいつ休んでいるのかと心配になるくらいよく働く人ですが、

「明日は久々にオフ!寝る!」と言っていたので

今頃ゆっくり休んでいることを願います。

 

私は日・月とお休みをいただき、

次は火曜日にマネージャーの手伝いをした後、Old Vicスタッフの会議に参加させてもらいます。

それまでに修士論文を進めなければ・・・

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8月の公演に向けて

ロンドンにもやっと夏が来ました。

2日間ほど(笑)

この前30度を超えた日があって、ロンドンは大騒ぎ。

私の周りでも予定をキャンセルして日光浴に行くイギリス人が・・・

日本だと日焼け止め!日傘!日陰!と言われますが、

イギリスでは貴重な太陽。サングラスをかけた人が至る所で寝ています。

 

さて、気温が上がる季節にぴったりな(?)、”Rise”という劇の公演に向けて

週5でリハーサルが行われています。

私はProduction Teamに配属されて、

プロデューサーやステージマネージャーのお手伝いをしています。

コミュニティー・カンパニーですが、老舗の劇場The Old Vic Theatreのメンバーが率いているので

彼らの仕事を直接学べるのがありがたいです。

 

で、何をやってるかというと

オフィスでのパソコン作業が半分、リハーサルのお手伝いが半分といったところです。

リハーサルのスケジュールを作ったり、プログラムの写真を選定したり。

プロデューサーとマネージャーの会議に出席させてもらったり。

ステージマネージャーと一緒に小道具の管理をしたり。

遅刻者のリストに提出書類のチェック。

膝を負傷した出演者のために氷を買いに行ったり(笑)

舞台を作り上げるための、小さな作業の繰り返し。

日々のスケジュールを円滑に進めるためのバックアップという点では

前職の予備校運営と似通っているなぁと感じます。

 

舞台でのパフォーマンスも好きですが、

プロデューサーと一緒に働いているとプロジェクト全体が見えてくるので

それがとても楽しいです。

そしてパフォーマーが楽しそうにリハーサルに来ているのを見るのが嬉しいです。

 

ロンドンでいろいろやってみて、

舞台に立つのは趣味の範囲にしておいて

仕事は裏方がいいなぁと気づきました。

日々、リハーサルを終えたパフォーマーが笑顔で帰って行くのを見るのが好きです。

前職で、授業や自習を終えた学生たちを見送っていたのを思い出します。

 

舞台の詳細はこちらから。

http://www.oldvictheatre.com/oldvicnewvoices/community/the-old-vic-community-company/rise-2/

 

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舞台版ハリー・ポッター:Harry Potter and the Cursed Child

もう3週間ほど前のことですが、

ウェストエンドで公開中(まだプレビュー期間かな?)の、

ハリー・ポッターの舞台版を観てきました!

 

ちなみにここでネタバレはしませんのでご安心を。

 

6月中旬のチケットを購入したのは、去年10月でした。

ちょうど発売の直前に、どこぞから案内のメールが来て

(たぶんロンドンのいろんな劇場のメルマガ登録をしていたので)

発売時間ぴったりにウェブサイトへ行きました。

 

たしかサイトに繋がるまで、1時間は待ったと思います。

 

舞台は第1部と第2部に分かれていて、別々の日に観に行くことも可能ですが

そんなに待てないので土曜日の昼に第1部、夜に第2部とチケットを取りました。

 

そして当日。

 

午前中は予定があったので、開始10分前に到着。

 

驚いたのは、開始10分前で客席がほとんど埋まっていたこと!

 

ロンドンの他の劇場だと、開演ギリギリまでロビーでお酒飲んだりして

開演時間を5分過ぎてから始めることが多いのに

開始10分前に行儀よく座っていたのがびっくりでした。

 

きっと普段演劇を観ない人も多かったのでしょう。

さすがハリー・ポッター、素晴らしい集客力です。

 

ストーリーはハリーたちの子供がホグワーツに入学してからの話。

その子役がめちゃくちゃ可愛い!

と思ったら、後日ロンドンの新聞・Evening Standardに彼の写真とインタビューが。

なんと、成人してました。

15歳くらいかと思っていたのに、今年23歳になるそうです・・・。

この人です。

Sam Clemmett

 

ハリー・ポッターシリーズと言えば、魔法。

舞台上でも、「一体どうやってやったの!?」という様々な仕掛けがされており、

そのたびに拍手が湧きました。

本当に魔法。

 

休憩に入ったとき、思わず隣に座っていた知らない女の子と

「すごかったね!」と盛り上がる盛り上がる・・・

彼女はパキスタンから来た留学生だそうで、

ロンドンにたまたま1週間だけ滞在するタイミングでチケットが取れたそう。

夜に第2部を観に戻って来た時も、彼女が隣に座っていました。

 

劇場を出るときに、「#KeepTheSecrets」と書かれたバッジが観客に配布され、

「内容は絶対口外しないように」と念を押されました。

なのでここでは書きませんが、当日に運が良ければリターンチケットが買えるかもしれないので

これからロンドンへ行く人は、ぜひ観に行くといいと思います。

 

ちなみに劇場内にお土産も売ってます。

私が買ったのはこちら。

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布バッグは、キングスクロス駅から徒歩すぐの図書館へ行くのに使ってます(笑)

 

もともと小さいころに観たハリー・ポッターの風景に感動して

「いつかイギリスに住む!」と決意した経緯があったので

このタイミングで観に行けたのが嬉しかったです。

セリフも面白かったので、スクリプトを買ってもう一度文字で楽しもうと思います。

 

でも本音を言うと、もう一度劇場で観たい!

 

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私に投票権はない

私のミスでお恥ずかしい話ではありますが、

これから海外に行く人には同じ悔しい思いを味わってほしくないので、

書き残しておこうと思います。

 

来る夏の参院選、私は投票できないことが発覚しました。

 

2ヶ月前に在外選挙人登録をしていなかったからです。

 

昨年9月に渡英する前に、地元の市役所へ転出届を出していました。

そしてロンドンに来てからすぐ、大使館へ在留届を出しました。(インターネットで簡単にできます)

在留届を出すと、日本大使館からいろいろなお知らせのメールが届いたり、

万が一の際の安否確認がスムーズになります。

 

で、6月22日に

「6月23日~7月3日まで、在外投票が始まります」と

大使館からメールが届きました。

 

どうやって投票するんだろう?と調べたところ、

在外選挙人登録が必要とのこと。

そして、登録のためには

 

①日本で転出届を出す

②現地で在留届を出す

③海外に在住して3ヶ月が経ったのち、在外選挙人の登録申請

④審査が終わるまで2ヶ月待つ

 

というステップがありました。

申請自体は海外在住3ヶ月以内でもできるのですが、

たとえ渡航直後に申請したとしても、

在住3ヶ月を過ぎた日から2ヶ月かけて審査・登録をするそうです。

 

私の場合、今回の参議院議員に間に合わせようと思ったら

遅くとも4月には申請しなければならなかったようです。

 

全然、頭にありませんでした。

4月と言えば、大学院の期末エッセイ3本に、2つのショーを抱えていた時です。

というか、審査に2ヶ月もかかるのを知りませんでした。

 

そういえば前にも、留学中で投票できなかったことがありました。

当時はカナダに行って3ヶ月、今思えば在外選挙人登録ができない期間でした。

いきなり政権交代しました。

あの時はまだ二十歳そこそこで、正直一票の重みなんてわからなかった。

でも今、一夜にしてイギリスの空気が変わったのを体感して、

一票の重みを知りました。

 

私のように、在外選挙人登録の方法を知らずに機会を逃した人、

知っていたけど渡航時期と期間の関係で、どうしても投票できない人。

沢山いるんじゃないかと思います。

留学しろ、世界で通用する人材になれと言うのであれば、

もう少し海外在住の日本人が投票しやすいような制度にならないものかと思います。

在留届はインターネットですぐ出せるのに、

なぜ在外選挙人登録は渡航後最低5ヶ月かかるのでしょうか。

 

最後に。

演劇やダンスといった舞台芸術は、昔から政治と深くつながりがありました。

バレエは宮廷から発展し、フランス革命で民衆が勝利してからまた形を変え、

演劇も時代によって、「これを民衆に見せるのは都合が悪い」と目をつけられては

劇作家が捕まったり命を落としたりすることもありました。

例えば「戦争」をテーマにした演劇があったとすると、

今は作り手も観客も「反戦」「悲劇」「過去の反省」といったものを想像すると思いますが、

第二次世界大戦の真っ最中に、そんな作品は作れなかったでしょう。

 

先日のEU国民投票では、

投票の1~2か月前ごろから、EUをテーマにした劇場主催のイベントがちょくちょくありました。

私も所属しているコミュニティーシアターのイベントに参加してきましたが、

演劇にかかわったことのない近所の人たち、EU圏内を行き来するアーティスト、

私のようにEU圏外から来た人など、様々な立場の人たちがいました。

ただ討論するのではなく、EUの歴史をグループごとに即興で演じたり、

体を動かしながら理解を深めていきました。

 

ということで舞台芸術の勉強をしていると、自然と政治に目を向けざるを得なくなるのですが、

その中で投票権がないのはとても悔しいです。

 

日本で4年間働いて、税金納めて

ロンドンの大学院に来て、Brexitをこの目で見て

そんな20代の一票が、日本の政治に反映されない。

 

これから5ヶ月以上海外に滞在する予定のある人は、必ず在外選挙人登録をしてください。

外務省のリンクを貼っておきます。

外務省・在外選挙人登録

 

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許すこと: ジゼル

修士論文の締め切りまであと2ヶ月。

古典バレエを現代風にアレンジしたものをテーマに書こうと決めて、

ケーススタディをアイルランドの振付家による「ジゼル」にしました。

もう10年以上前の作品で、写真と記事しか残っていなかったのですが、

振付家本人の連絡先をネットで探し当て、連絡してみたところ

親切にもDVDとスクリプトを送っていただきました!

 

ダンスだけではなくセリフも沢山あるので

スクリプトは本当に助かります。

 

アレンジされたジゼルについて研究するのに、

19世紀に誕生したロマンティック・バレエのジゼルについても調べました。

今年は誕生何周年という節目の年でもないのに、

実は多くのバレエ団がジゼルを上演しています。

なぜこれほど、ジゼル大豊作なのでしょうか。

 

まずは英国ロイヤルバレエ。

ロンドンでは既に終わっていますが、たしか今は日本公演をやっていますね。

そしてEnglish National Balletは、今年の秋と来年1月にジゼルをします。

今年の秋は9月~11月にかけて、コンテンポラリーの振付家・Akram Khanによるジゼル。

(音楽も振付もかなり違うんじゃないでしょうか)

来年1月は伝統的なジゼルをするそうです。

また、カナダのバレエ団でも先日ジゼルの公演がありました。

 

ネットや宣伝動画を見ると、ジゼルはどのバージョンも共通して

“Tragedy and Forgiveness”

という言葉で表現されています。

日本語にすると、tragedyは「悲劇」、forgivenessは「許すこと」となりますが、

バレエ団のHPなどを見ていると、特にforgivenessの方が強調されているように思います。

 

1幕の最後で恋人に裏切られて死んだジゼルが、2幕でどう彼を許すのかというところですが、

正直イマイチしっくり来ないなぁーと思っていました。

無条件に許すというのが。

1幕ではあんなに長い時間、狂気に陥って暴れてたのに!と。

 

ちなみに修士論文で扱うジゼルは、そこのところの葛藤が振付に表れていました。

2幕でジゼルとアルブレヒトが踊るシーンで、ジゼルが許すか許すまいか、

葛藤してアルブレヒトを拒絶する場面がさりげなく入っています。

で、許したジゼルの魂が救われて

最後は楽しそうに飛び跳ねる…という演出。

 

さて、本題に戻ります。何でジゼルがこんなに多いのか。

たまたまかもしれません。

が、私がもしバレエ団でプログラムの演目を選ぶとしたら、やはりジゼルにしたと思います。

 

だって、この世の中ですよ。

 

イギリス、えらいことになってます。

 

普段穏やかな人たちも、国民投票の結果が出てから

毎日怒りの声を上げ続けていたりします。

 

気持ちはわかる。

「自分の一票が影響すると思わずに、離脱に入れたのを後悔している」と言ってる人たちを

思わず怒りたくなるのはわかる。

 

でも、溝を深めるより許しあう方に行けばいいのにと思います。

完璧な人はいない。完璧な組織はない。完璧な政府はない。

 

ジゼルは死後にアルブレヒトを許しましたが

現実の世界では、死んでからでは遅い。

今こそ、ジゼルから学ぶときなんじゃないか。

 

修士論文を書きながら、そう思います。