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DreamThinkSpeakワークショップ

うちの大学には演劇サークル的なものがいくつかあるのですが、その中でおそらく最大勢力と思われるKing’s Playerが毎週ワークショップを開いています。

というのを最近友人に聞いて初めて知り、2人でワークショップに参加してきました。

 

ワークショップが行われたのは見た目はオンボロ、中はちゃんとしたステージやバーを併設したstudent unionの建物。

テムズ川に臨み、タワーブリッジ・シャード・ナショナルシアター・ロンドンアイなどが一望できます。学費が高いのも納得(笑)

 

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ゲストスピーカーとして来てくれたのはDreamThinkSpeakという劇団の芸術監督、トリスタン・シャープス氏(Tristan Sharps)。

サイトスペシフィック・パフォーマンスという劇場以外のさまざまな場所を活用することで知られ(彼はsite responsiveと言っていますが)、金沢と高知でも2013年に公演をされています。

 

私は彼の作品を観たことはありませんが、ウェブサイトで見た感じとても素敵です。

DreamThinkSpeak Productions

 

なんといってもトリスタン・シャープス氏が素敵!

終わってから話しかけるととても気さくに応えてくれ、別れ際も「今日は来てくれてありがとう!」と彼の方から私と友人に握手を求めて来られました。

 

「サイトスペシフィック・パフォーマンス」(site-specific performance)というジャンルは、授業で何度か出てきました。

演劇・ダンス・アートを劇場や美術館とは違う場所(屋外・工場・教会など)で行うとき、どうスペースを使うのかが重要になってきます。

その場所にフィットするように演出するのか、もしくは「こんな使い方!?」と意外性を狙うのか。

 

トリスタン・シャープス氏のスペースに対する感覚は、子供の頃に鍛えられたそうです。

「昔はとても狭いアパートに住んでたから、広いスペースをよく想像したんだよ。こんな風に使いたい、あんな風に使ってみたいと」

 

その後パリにあるフィジカルシアターの名門、ジャック・ルコック演劇学校で学び、演劇の世界へ。でも本当はアートに興味があったとか。

 

「子供の頃、学校の先生に『絵の才能はない』と言われた。でも信じなかった。あれは先生が悪かった」

 

淡々と話すシャープス氏は、自分の能力に責任を持っているように見えました。才能は先生が決めるものではない、上手くなりたいから練習するのだと。そして現在は演劇とアートを組み合わせた作品を作っています。

 

他にも過去の作品の制作過程やお客さんの反応など、2時間にわたって話していただきました。

ほとんどが空間の話。

「窓を開けたら電車が走ってて、廊下の向こうに庭があって…素晴らしいスペースだった」

「金沢にはマンガがいっぱい置いてある場所があって、とても面白かったよ!」

兼六園や21世紀美術館ではなく、マンガ喫茶に興味をそそられたようです。

 

そういえば先日、他のアーティストも「スペース」をテーマにしたパフォーマンスをしていました。

 

「私たちは皆コンクリートの上に住んでいる」

 

そう言うと砂の中に両足を入れ、その上からワインを注いで地面を固めていました。

 

空間に対するいろんな捉え方・表現の仕方があるものだなぁと思いました。

 

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土と牛乳にまみれて:FEAST

教育上あまりよろしくないパフォーマンスを観てきました。

 

FEAST=饗宴、宴会。

 

名前から連想されるように、「食べ物」をテーマにした作品です。

 

とてもグロテスクな。

 

うちの大学院では学期ごとに「おすすめのパフォーマンスリスト」が手渡されます。そのリストを作っている先生がわりと前衛的な作品を好むのか、観に行ってビックリすることも多々ありました。今回は先生と私とクラスメートの3人で観てきました。

 

会場はBattersea Arts Centre。実験的な作品を多く扱い、若手アーティストが多数活躍しています。

21時開演、自由席。開演ギリギリで入ったので、席はほとんど埋まっています。

唯一空いていたのが最前列。なんでだろうと思いつつ最前列に行くと…

 

客席と繋がったパフォーマンススペースには土が敷き詰めてあり、目の前には非常に薄着の(ほぼ裸の)女性2名と男性1名。それぞれフォーク・スプーン・ナイフを持ち、足首にロープでたらいのようなものが括り付けられ、ポーズをとっていました。

 

それでみんな最前列を避けたのか…

 

照明が切り替わると、3人は土の上を這い始めました。

体中、土だらけ。しかも動くとこっちに飛んでくる。

 

“Breakfast”

 

前方のスクリーンに文字が映されました。

すると、上から滝のように牛乳が!!

3人は口を開けて上から降ってきた牛乳を飲みます。

 

ここで私と隣にいた友人のカバンに悲劇が…

 

脚の間に挟んで置いていたら、土と牛乳まみれになりました。

帰ってからウェットティッシュで拭いたらなんとかなりましたが、友人は布のバッグだったので心配です。

舞台後方ではシリアルが降りました。

欧米の朝ごはんです。

 

 

“Lunch”

 

豪華な食材が乗ったテーブルが現れました。

生肉とか。生野菜とか。

お弁当によく入ってるタイプのミートスパゲッティとか。(あのめっちゃオレンジなやつ!)

 

スパゲッティをわしづかみにして戦い始める2人。

案の定、こちらに飛んできます。

オレンジ色の服を着ていったのが不幸中の幸い…

 

その後赤ワインを飲み始める3人。

今にもグラスからこぼしそう+口から噴きそうだったので、

 

「頼むから赤ワインだけはやめて!!!」

 

と心の中で叫びました。

やはり口から噴き出したのですが、幸いこちらには飛んでこず。友人もかなりドキドキしたそうです。

 

ほかにも生肉を身体にたたきつけたり、ほうれん草をこすりつけたりしていたので、パフォーマーの身体はドロッドロです。

 

“Dinner”

 

3人がテーブルに立ち、まさかの排泄シーンから始まりました。

うまいこと動きと音で表現していましたが、本当に吐くんじゃないかと内心ヒヤヒヤ。

ここからは小型カメラを使い、食材や口の中をスクリーンに大写しにしていました。

ラップで顔をぐるぐる巻きにして動かなくなるなど、死を連想させる演出でした。

 

ここまで食への渇望・無駄を直接的に描いた作品は初めて見ました。

終演後、駅で食べ物の匂いが漂って来たときはただただ気持ち悪いとしか思えませんでした。

帰りにスーパーで買い物をする予定でしたが、できませんでした。

 

しかし悲しいことに、人間はすぐに忘れてしまう生き物。

翌日は普通に肉を食べました。

 

 

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レイフ・ファインズにつられて:The Master Builder

ロンドンに来たら生で観たかった俳優の1人、レイフ・ファインズ様の舞台をついに観てきました。
「ハリー・ポッター」のヴォルデモート、「007」のマロリー(M)など、映画やテレビでも多数活躍されていますが、この人は絶対舞台で観るべき!!

 

声も身のこなしも品と深みがあって、 本当に素敵でした。

 

Old VicはThe Master Builder仕様になり、周辺の壁には彼のポスターがズラリ。
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終演後、ポスターの横にならんで写真を撮る人がたくさんいました。

私もやりました。ツーショットを自撮り(笑)

 

さて、演目のThe Master Builderは「近代演劇の父」と言われるイプセンの作品。

日本語では「棟梁ソルネス」と訳されています。

 

以下、簡単なあらすじです。

街で一番の棟梁・ソルネス(レイフ・ファインズ)は若手の台頭を恐れていた。そこに10年前に出会ったという若い女性・ヒルデが現れ、「空中に城を作る」という約束を果たしてほしいと言う。彼は以前双子の子供を亡くして以来希望を失っていたが、約束を果たすべく塔に登る。ヒルデやソルネスの妻らが見守るなか頂上までたどり着くも、転落死してしまう。

 

正直、好きな類の話ではありません。

 

ヒルデ、何しに来たん!?なんでわざわざ塔に登ったん!?

 

ツッコミどころ満載です。

 

でも理屈では説明しようのない、どうしようもないことをやってしまうのが人間です。

私もなぜか、終演後にスクリプトを購入しました。好きな話でもないのに。

 

ヒルデが最後に”My master builder!”と誇らしげに叫ぶ声がまだ耳に残っています。(ヒルデ役の女優さんが何となく土屋アンナに似ていたような)

自分のせいで死んでしまった…と悔いることもなく、「私の」と付けて叫ぶあたりが狂気じみていますよね。大きなブランコをこぎながら、ソルネスが塔のてっぺんにたどり着けたことを祝福していました。

 

死ぬ間際に何かを成し遂げられて良かった、とは私は思いません。双子も夫も亡くした奥さんはどうするの?(いや、この奥さんもたいがい変わってるので、図太く生きていくのでしょうが…笑)

彼の場合はまさしく「地に足のつかない」場所に城を作ると言って塔に登っていきました。踏み込んではいけない領域に踏み込んだような。Master Builderと言われる人が、なぜさらなる高みを目指すのか。

 

ソルネスをヒーローではなく「ちょっと理解できないところがあるおじさん」として演じていたのが良かったです。あえて感情移入をさせずに観客と距離を取った、そんな印象でした。

でももっと知りたいので、翻案を手掛けたDavid Hareのトークイベントに今度行ってきます。

この人は日本でNTライブとして公開された「スカイライト」も手掛けた人。スカイライトは渡英前に観てとても気に入った作品だったので、楽しみです。

 

それともう一つ。

レイフ・ファインズ様が、2018年にNational Theatreで主演するというニュースが入ってきました。

 

観に行きたい!!

 

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ギリシャ悲劇モチーフの作品を5作品読み比べた

「この世にオリジナルは存在しない」

 

第2タームから始まったDramaturgyの授業の1発目で出てきた言葉です。

ギリシャ悲劇もシェイクスピアも、それぞれの元になった話があります。

「自分で作ったからオリジナル!」と言っても、何かしら拠り所になる文化だったり何かに影響されているはずで、全くゼロから生まれた話はありません。

 

では1つの話が違う劇作家の手にかかるとどんな感じになるのか?と、同じ題材を用いた5人の作品を初回の授業までに読んでくるように言われました。以下、「作者」「タイトル」「上演年度・国」です。

 

・Euripides, “Hippolytus”紀元前428年、ギリシャ。

・Seneca, “Phaedra”54年、ローマ。

・Jean Racine, “Phedre”…1677年、フランス。

・Sarah Kane, “Phaedra’s Love”1996年、イギリス。

・Charles L. Mee, “True Love”2001年、アメリカ。

 

テーセウスの妻パイドラーが義理の息子・ヒッポリュトスに恋をする→乳母がヒッポリュトスに、パイドラーの恋心をばらす→息子に拒絶されたパイドラーが息子を陥れる内容の遺書を残して自殺→それを見たテーセウスが激怒し、息子を殺す

 

という流れはだいたい同じです。

 

元はギリシャ神話から来ています。本当に誰が作ったのか、今となってはわかりません。

エウリピデスの作品は、神様が登場します。義理の息子に恋をしたのも、悲劇的な結末を迎えるのも、全てギリシャ神話の神々のいざこざが原因です。

セネカ以降はパイドラーが中心となり、神様は出てきません。だんだん彼女が自らの恋心、罪の意識に苦悩する様子に焦点が当てられるようになります。

サラ・ケインは28歳という若さで自殺したイギリス人劇作家。”Blasted”など、かなり暴力的・性的に過激な作品で知られています。”Phaedra’s Love”も「あぁサラ・ケインだ…」という感じでしたが、一番スラスラと読めました(笑)潔癖だったはずのヒッポリュトスが、サラ・ケイン版では現代の遊び人になり、パイドラーも罪の意識はどこへやら、開き直って肉体関係を迫ります。

“True Love”も舞台は現代へ。これも会話のテンポが良くて読みやすかったです。ジャン・ラシーヌ版はセリフが長かったせいか、あまり覚えていません(笑)

 

5作品それぞれ登場人物の捉え方、義理の息子への恋心の捉え方がこんなにも違うのかと驚きました。形は時代ごとに変わるものの、2000年以上劇の題材として伝わっているのは面白いですね。

 

ちなみに初回の授業では、上記5冊に加えてアリストテレスの「詩学」も事前課題の1つでした。私はせっせと読んでいきましたが、ギリシャ人のクラスメート2人は「今さら読まないよ」と。

なんで?と聞いてみると、「だって子供の頃から何回も読まされたもん」「もうアリストテレスは身体にしみついてるよねー」とのことです…。

 

さすがです。